2018年11月23日、奈良女子大学で開催された今「教育×アナログゲーム」が熱い!〜教育ゲーミングを体験しよう!というイベントに参加してきました。

イベントは午前と午後に分かれ、午前はアナログゲームを教育に取り入れている各大学の先生方の自己紹介を兼ねた事例紹介、同じ先生方パネルディスカッション。午後は紹介のあった各ゲームを実際にプレイしたり、自分で新しいゲームを企画・製作できる場が用意されていました。企画・製作の方は、基本的な考え方を指導してくださり、それに基づいてシナリオを作りゲームのマテリアルを製作します。マテリアルを製作するための素材も用意してくださっていました。

紹介、試遊させていただいたゲームは以下の通り。 ゲームを通して社会問題や社会の仕組みを知ったり、考えたり、議論できるようなものになっていて、それぞれの問題の当事者として考えることができる「ロールプレイングゲーム」でもあります。 「ロールプレイングゲーム」というと「ドラゴンクエスト」が有名ですが、ドラゴンクエストは自分が勇者としてゲームの世界を冒険するゲームであり、勇者という役割(”Role”)を体験するゲームというわけです。 ですので、今回紹介されたゲームはほぼすべて「ロールプレイングゲーム」と理解しています。

それを言ったら「インベーダー」だって地球を侵略するインベーダーと戦う地球防衛軍という役割を体験する、という意味で「ロールプレイングゲーム」と呼べるように思われるかもしれませんが、一般的に「ロールプレイングゲーム」とは詳細なシナリオが用意されていて、ゲームの進行がある程度プレイヤーの裁量に任されているものをいいます。

ちなみに「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム」と呼ばれるアナログ型「ドラゴンクエスト」のようなゲームは、ゲームマスターの裁量でシナリオが変化するので自由度がさらに高く、ゲームマスターにスキルの高さが求められます。

午前の部

事例紹介が1時間、パネルディスカッションが1時間とう時間配分だったのですが、パネルディスカッションではテーマと各テーマに対するパネラーの意見が、あらかじめまとめられていました。

それを参照し当日の発言を反映してさらにコメントを重ねていくというやり方だったので、一般的なパネルディスカッションよりも効率がよく分かりやすい進行だったと思います。パネルディスカッションって、パネラーの紹介の後テーマに対するトークがちらっと入った後、司会があらかじめ用意した結論に無理やりまとめるみたいなことが多いのですが、今回のこのやり方は各パネラーさんの意見がしっかり知ることができて良かったと思います。

午後の部

私が試遊したのは、「がちかん」「PERITUS-Strategy for Space Mission」の2つです。

「がちかん」

このゲームは、各プレイヤーがひとつの国を統治する人(国王)になり、開発と環境保全という二つの選択肢(カード)を駆使して国力(スコア)を上げてきます。開発を選択すると環境リスクが上がっていき、環境保全を選択するとリスクを下げられる可能性が高くなります。ゲーム中に発生した環境問題に対してこれらのカードを使って対応していくのですが、単にカードをあてがうだけではなく、そのカードの意味や背景について自分の考えを巡らせ、プレゼンテーションしないと対策できないという仕組みになっています。プレイヤーには環境に対する知識はもちろん発想力や話力などが求められるゲームで、ゲームの進行に関わる判断もプレイヤーの裁量に任されているところが先に書いた「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム」に近い性質のものでした。

いざ、環境問題について考えよう議論しようといってもなかなか難しいものです、何を話していいかわからない環境問題といっても色々ある。でも、このゲームを通してであれば、広いテーマでの環境問題について考えたり、自分の知らない環境問題を知ることができるのではないかなと思いました。

このゲームは奈良女子大学の「NaLab. (ならぼ)」で企画・製作されたもので購入もできます。

がちかん

宇宙開発を体験!「PERITUS-Strategy for Space Mission」

このゲームは、各プレイヤーが宇宙開発事業プロジェクトの責任者となって宇宙開発事業を推進するというもので、限られた予算の中でプロジェクトを成立させる難しさを体験できます。開発カードとイベントカードが用意されていて、一定の決まりにそったカードを集めると開発が完了します。しかしカードを揃えるだけではダメで、開発したものをロケットに搭載して打ち上げないといけませんが、ロケットにも開発・製造のタイミングがあり、それに合わないと打ち上げることができません。また、打ち上げに失敗することもあり失敗するとそれまでの開発(揃えたカード)が水泡に帰すという鬼のようなゲームです(実際に自分は失敗しました)。

もうひとつのファクターとして予算があり、プロジェクトに対する国の評価や国民の評価によって左右されます。 予算をあげるために開発を犠牲にする(広報活動に力を入れる)という選択を迫られることもあり、こちらでも頭が痛い問題を体験できます。 開発が完了しても予算が引き下げられて開発成果がムダになるといったこともあって、実際こういった事業に関わってる人がやるとなかなか辛いゲームなんじゃないかな。

宇宙開発はもちろん、国家プロジェクトに一般の人が関わるようなことはないので、これもそういったテーマが体験できるという意味でとてもおもしろいと思いました。

こちらは、鳥取大学において企画・製作されたもので購入はできませんが、用途と製作意図が合致すれば貸し出しを受けることもできるようです。

PERITUS

共通点

いずれのゲームにも言えることは、「ゲームシステム + シナリオ」でできているということでした。

つまり「シナリオ」の部分を別のテーマに置き換えることで、自分が取り上げたいテーマのゲームを作ることができるのです。実際「PERITUS-Strategy for Space Mission」は、宇宙開発に絞って考えるつもりはなく、色んな事業に適用して広く科学事業を知ってもらうことを目標に開発されたということでした。

自分としては「貧困問題」や「情報リテラシー」をテーマにしたゲームを作ってみたいです。

アナログ vs デジタル

パネルディスカッションの中でも「アナログとデジタルの境界」といった話が出ていたので、私が思うとアナログとデジタルの関係について、述べてみたいと思います。

アナログ、デジタルって何かというと私の理解は「実現方法、表現方法」です。私たちが住んでるこの世の中は基本的にはすべてアナログ。その一部をデジタルという「実現方法、表現方法」で置き換えているだけのことで、もちろんそれぞれのメリット、デメリットがあるのでアナログとデジタルを適材適所でどこを置き換えるかということ。

「アナログがいい」とか「いやいやこれからはデジタルでしょ!」という議論をするのではなくて、それぞれをどこでどんな風に使うのが良いかということを考えればいいと思います。

たとえば「モノポリー」という有名なゲームがありますね。これはボードゲームでありアナログゲームです。 一方で、スマートフォンやタブレットのアプリとしても「モノポリー」は提供されていて、アナログとデジタルの両方で遊べます。

ではどっちがいいのか?というとそれぞれに良いところがあります。 デジタルゲームのいいところは、ひとりでもプレイできる、コマを動かしたりお金のやり取りはアプリが管理してくれるので手間が少ないし間違うこともない。遠く離れたプレイヤーと遠隔で遊ぶこともできます(この機能が実際のアプリにあるかどうかは知りませんが、デジタルなら可能という意味で)。

一方、アナログゲームだとひとつの場所にプレイヤーが集まってプレイするので、ゲーム以外の不確定要素(ノイズ)が発生します。 たとえば、コマの動かし方を間違った(それに誰も気づかなかった)とかルールの解釈に曖昧な部分があったのでその場の解釈でルールを作ったとか。 こういったノイズが元々ゲームをプレイすることで発生するはずだったのとは別のコミュニケーションが生まれる場合もあります。 この点についてはパネラーのみなさんも「アナログゲームの良いところはコミュニケーションが生まれるところ」とおっしゃっていたところだと思います。

お金やカードを扱うゲームの場合、その揃え方によってきっちり整理して持ってる人、ばさっと混ぜて持ってる人など各プレイヤーの個性がでることがあります。 そういったところもまたノイズのひとつになって新しい人間関係が生まれるきっかけになるかもしれません。 それはそのゲーム本来のテーマとは違う副次的なものですが、アナログゲームのメリットだと思います。

じゃ、デジタルがダメかというとそんなことはなくて、デジタルの特性として「コストが抑えられる」「複製が簡単」というメリットがあります。 複製が簡単なので多くの方にプレイしてもらうことができますし、マテリアルにかかるコストも抑えることができます。

作る上でのハードルはScratchのようなツールを使うことで圧倒的に下がっていますし、実際に多くの小学生はこれでオリジナルのゲームを作っています。

このように、アナログとデジタルは「どっちがいいか?」ではなくて「どう使い分けるか?」という話なんだと思います。

作ることで学ぶ

ゲームを通した学びは「プレイして学ぶ」と「作って学ぶ」の2つがあります。前者は言うまでもなくゲームのシナリオに含まれた社会の仕組みや問題について学ぶということ。後者は、ゲームを作るプロセスで学ぶということです。

ゲームを作るプロセスにおいても、シナリオとして採用しようとしている「社会の仕組みや問題」について学ぶことができます。誰かに何かを教える時、その準備期間が自分にとって最大の学びになるのと同じですね。

もうひとつ、シナリオの内容に関係なくゲームを作るプロセスから身につけられるものとして「論理的に考える、ものごとを整理する」能力があると思います。

たとえば、ゲームを作るにあたってルールを決めなければなりませんが、ルールはゲーム内で発生するすべての事象について決まっていなければなりません。 もし漏れがあったらそれはゲームとして不完全ですし、ひとつの事象に対して異なる解釈ができるルールが存在するとプレイヤーは混乱しますしどう対処していいかわかりません。 そんなゲームは「クソゲー」と呼ばれて終わりです。

ですので、ルールを考える上では「モレなく、カブリなく」考えることが求められると思います。

また、抜け道があってもいけません。ルールに抜け道があってその抜け道を利用すると簡単に勝ててしまう必勝法ができてしまうので、抜け道ができないようにすることを考えなければなりません。 こういったところは「セキュリティ」の概念に通じます。アナログゲームを作ることで「セキュリティ」の概念を理解できるんじゃないかなって思います。

他にもゲームを作ることを通して学ぶことはたくさんあると思います。ゲームの企画と製作は間違いなくPBLのひとつですよね。

教育におけるゲームの意味

「ゲーム」というと「遊び」に置き換えられて「勉強」の対極にあるように見えてしまいますが「教育」の文脈における「ゲーム」はユーザー体験(User Experience)なのです。だから、教育にゲームがあっても全然おかしくない。ここは多くの方に理解して欲しいところです。

次回はいつかな

自分としては、とても良いイベントだったと思います。教育関係者やゲームに関係する方の参加が多かったと思いますが、もっと一般の方、実際にこれらのゲームを通じて学ぶ対象の若い人の参加があればいいなと思います。